
オーストリアの首都ウィーンにあるフンデルトヴァッサーハウスにいってきました。フンデルトヴァッサーはウィーン生まれの芸術家で、自然を愛するがゆえに直線を嫌い、絵も建築も曲線ばかりをつかって制作したこだわりの人です。彼がつくった床も壁も天井もぐにゃぐにゃしている家、それがフンデルトヴァッサーハウス。ウィーンの街のクラシカルな建物と一味もふた味もちがう色かたちなのに、なぜか街になじんでいる不思議な家でした。居心地の良いピロティや噴水に住人の方々が大変うらやましくなったよ!わたしも住みたい!
6月半ばに中欧のオーストリアにいってきました。不思議なくらいよく間違えられるのですがオーストラリアではなくオーストリアです。カンガルーやコアラやウォンバットはいませんがモーツァルトの扮装した人やストリートでオペラ歌っちゃう人がいる、それからサウンドオブミュージックの舞台があったりする、そんな国です。
昨年11月にチェコと併せて初めて訪れ、あまりにも見どころがありすぎてもう一度来たかったウィーンとザルツブルクへ念願の再訪。6月という花咲き乱れる最高の季節に来ることができ、わたくしすっかりオーストリアの虜です。あーまた行きたい。
さてそんなうっとり気分から始まるオーストリア旅行記。今回は、床も壁もぐにゃぐにゃしてるアートな家、フンデルトヴァッサーハウスにいってきた記録です!
自然と共に生きろ。曲線だらけの集合住宅、フンデルトヴァッサーハウスにいってきた 目次とアクセス
フンデルトヴァッサーハウスへは電車と徒歩で。 U3線 Rochusgasse(ローフスガッセ)駅で下車して歩いていきました。オペラ座のある繁華街の駅 Karlsplatz(カールスプラッツ)駅からだと乗り換えがありますが、電車に乗っている時間は10〜15分程度だった気がします。ウィーンはトラムと地下鉄がとても便利で、うろうろ街を歩くのが好きなわたしには天国です。
Rochusgasseからフンデルトヴァッサーハウスに行く途中には、ベートーヴェンが交響曲5番(運命)を初演したという説のあるラズモフスキー宮殿など歴史的な建物もちらほらあるので、キョロキョロうろうろ楽しめますよー。
1. フンデルトヴァッサーとは
まず旅行記の前に、フンデルトヴァッサーさんについてちょろりと調べましたので記録いたします。早く建物見たい方はこちらをクリックしてとばしてくださいまし。
意外と日本に馴染みのあるフンデルトヴァッサーさん
フリーデンスライヒ・レーゲンターク・ドゥンケルブント・フンデルトヴァッサー。ウィーン出身の画家でありデザイナーです。自然との共生をテーマにした個性的な作品が有名。
From wikimedia Commons/File:Hundertwasser_nz_1998_hg.jpg 06:18, 8 July 2006(UTC) License=CC BY-SA 2.5
じつは日本人女性と結婚していたこともあったり、「フンデルトヴァッサー」をそのまま漢字にした「百水」という雅号を持っていたりもします。(ドイツ語で フンデルト[hundert] は 100、ヴァッサー[wasser] は 水 という意味)
子どものころから自然が好きだったフンデルトヴァッサーさん
そんな彼の自然ラブなエピソードをひとつ。
”幼い頃、森で花を摘み、押し花にするのが好きだった少年であったフンデルトヴァッサーは、花の色をきれいなまま残したいと絵を描き始めた”
– Wikipediaより
フンデルトヴァッサー少年可愛いね…!きゅーん!
このエピソードからしばらく経った10歳のころ、オーストリアがナチスドイツに併合されます。母親がユダヤ系だったフンデルトヴァッサーはナチスから隠れるようにユダヤ人街の地下室で暮らしました。怖かっただろうねぇ…。
画家を目指して出た旅で自然への想いは強固なものに
そんな経験を経て第二次世界大戦は終わりを迎え、フンデルトヴァッサーは画家を志して旅に出ました。その旅先のアフリカで自然の中に生きる人々のようすを見て、人と自然との共生をより強く理想に掲げるようになったそうです。
こうしてフンデルトヴァッサーは生涯をとじるまで自然をこよなく愛する芸術家となりました。その作品の多くは自然との共生、調和をテーマにしたものばかり。自然界には直線がないために人工的な直線を嫌った彼は、建物までも直線を使わず作ってしまいます。
フンデルトヴァッサーハウスはそんな彼の作品のひとつ。というわけで、見にいってきました!
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フンデルトヴァッサーとガウディについて
もうひとつだけ、フンデルトヴァッサーについて調べてて気になったのでさらに書かせてください。早く旅行記見たい方はコチラをクリックしてとばしてくださいましー!
おそらく目を引くためのフレーズとして使っているケースがほとんどなのかなと思いますが、フンデルトヴァッサーのことを「ウィーンのガウディ」と呼んでいる記事をいくつか見ました。そして、実際にはその呼び名は間違っているという意見も多いようでした(私も素人ながら同じ意見です)。
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ガウディが力学的計算に基づいた曲線を用いて設計していたのに対し、フンデルトヴァッサーはスケッチや模型・コンセプト部分のみを担当し、それを建築として成立させるために他の建築家の力を借りていました。ガウディが建築家なら、フンデルトヴァッサーはあくまでも「芸術家」ということですね。
以前スペインでガウディの代表作品もいくつか見たことがあります。美しい曲線で構成された建物たちは息が詰まるくらい圧倒されました。ガウディあんたこりゃすごいよ!そりゃ巨匠って呼びたくもなるわ!とおもったよ。
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そして今回フンデルトヴァッサーの建築作品を見て、こちらもまた大好きになりました。フンデルトヴァッサーのそれはインスピレーションに素直に突き動かされて作り上げた(ように見える)建物たちでした。
ガウディの作品は教会以外の作品でも単なる遊び心だけではなく緻密に計算された凄みがあるのに対し、フンデルトヴァッサー作品は規則性がない自然界の表現を目指したゆえに自由で、良い意味で稚拙な印象を受けます。わたしはその奔放さをとても魅力的に感じました。
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うまく言えないけど、曲線は曲線でも、建築家ガウディと芸術家フンデルトヴァッサーでは土俵が違うのではないかなーとおもいます。それぞれにぜんぜん違う魅力があって、比べるものじゃない気がするのです。実際に両方を見て、そうおもいました。
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2. ウィーンの鬼才が作ったフンデルトヴァッサーハウスと対面
長々とした前置きを読んでくださったみなさまありがとうございました!とばしたみなさまこんにちは!ここから本題、フンデルトヴァッサーハウスにいってきた記録をお楽しみくださいませ。
電車を降りて美しい建物たちを眺めながらてくてく歩いていると、フンデルトヴァッサーハウスを発見。既に可愛いな。
まわりの建物の写真があまりないのでわかりにくいですが、デザイン的にはかなり異質。でも、意外と浮いて見えない。なんでだろ。カラフルだけどトーンがおちついてるからかな?良いね。
フンデルトヴァッサーハウスはどうして作られたのかというと、フンデルトヴァッサーがテレビで人と植物の共生を熱く語ったところ、当時のウィーン市長がそういうコンセプトの公共住宅を作って欲しいと依頼したのが発端なんだって。やるね市長。
壁の模様や色が自由でおもしろい。あちこちから緑がもじゃもじゃ顔出してます。「集合住宅だけど庭がほしい」という理想を、「庭がないなら屋根やベランダに植えちゃえ!」という発想で実現したらしい。
デザイン(想像図や模型)はフンデルトヴァッサーが行い、実際の建設には、フンデルトヴァッサーのプランに賛同したペーター・ペリカンという建築家の協力があったそうです。
周りを歩いてるとフンデルトヴァッサーのつくった建物の説明が。
フンデルトヴァッサーハウスの建物1階部分にはショップと郵便局?がありました。
ステキ外階段。ぐにゃぐにゃしてます。
テラスにカフェがあるようでした。入ってみればよかった悔しい。
このときは6月半ばというウィーン観光のベストシーズンでしたが、観光客はちらほらいる程度で良いかんじ。団体さんはあんまり来ないのかな?
しかも、みんな多かれ少なかれアートや建築に興味ありそうな雰囲気が漂ってるのも居心地良かったです。
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人を外界へ誘うすてきな洞窟風ピロティ
大通りから曲がってピロティの方へ。
ところで、フンデルトヴァッサーハウスは現在も市営住宅として使われている、つまり住んでいる人がいるため、内部の見学はできません。でも外側ならいくら凝視してもだいじょうぶ!というわけでまずピロティをうろうろ観察。
すべての壁の角は丸みを帯びていて、やさしい印象。
施工職人さんはほっとくと直線の壁などを作りがちで、フンデルトヴァッサーとペーターさんが夜中にハンマーで壊して回ることもあったんだって。そのこだわりあってこそのフンデルトヴァッサーハウスだけど、職人さんからしたら腹立っただろうね。
タイルはいろんな色が使われてるんだけど、全体で見たときに落ち着いた色遣いになってるのが素敵。
ピロティは、道路に面したところと中庭と、両方向から光が差し込んできてほどよい暗さです。
柱の装飾もそれぞれちがったり、
モザイクタイルの模様に遊び心があって楽しい!
ピロティから正面の噴水広場を見たところ。洞窟から外を見たみたいな雰囲気です。木漏れ日や、みんなが広場でくつろいでるのが見えて、これなら外に出て日向ぼっこしたりお出かけしたりしたくなるね!
こちらはピロティから中庭を見たところ。中庭にも緑がたくさん植えられてました。
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モザイクタイルで水と遊ぶ噴水(兼ベンチ)
楽しい洞窟のようなピロティから噴水広場に出て、こんどは噴水をしげしげと眺めます。
ピロティの目の前に小さな噴水があります。子供たちも気持ち良さそうで、こっちもにこにこしてきちゃう。
フンデルトヴァッサーは、自然の一部として植物のほかに水を使うこともお気に入りだったみたいです。
この噴水、こぢんまりしてるところがまた親しみがわく。ふちの部分にはところどころ板が貼られて、座りやすいようになっています。
全体はモザイクタイルで飾られているよ。
水の中には黒いヘビ!
カニもいた!
これはなにか意味のあることが書いてあったタイルなのかな?複数種類のタイルを使っているところも心くすぐられました。
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フンデルトヴァッサーの筆致がそのまま立体になった!みたいな外壁
視線を上に向けるとそびえるフンデルトヴァッサー色全開の外壁。赤、黄色、白、青、石造りの部分も。
絵画がそのまま建築になったみたいな壁。
フリーハンドで描いたような線はあたたかみがあってほっこりするね。なぜか窓から鯉のぼり的な魚がぶらさがってたのだけどこれもカラフルなのが意識高いわね。
各窓にキーストーンのような装飾があって、それぞれいろんな色なのが可愛かった。(キーストーンというのは、レンガでアーチを造ったときに真ん中にくる重要な石のこと)
壁面からも屋上からも緑が顔を出していました。
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3. フンデルトヴァッサーハウス感想とまとめ
フンデルトヴァッサーハウス、外観だけの見学だったのに期待以上の満足度でした!ピロティと噴水広場の居心地の良さは本当にすばらしかった。
わたしだけではなく、実際に訪れていた人々が広場でゆっくりくつろいだりおしゃべりをする様子に、フンデルトヴァッサーは自然が好きなだけじゃなくて人間も心から愛していたんじゃないかなと感じました。直線を徹底的に排除した強烈なこだわりの人だったけど、愛あるからこそのこだわりだったんだと。そうでなければ、こんなにも居心地の良い空間は作れない気がします。
中も見てみたいよー。住人の方いらっしゃいましたらぜひお友達になってください!!!
HUNDERTWASSER HAUS
- 住所
- Kegelgasse 36-38 in the 3rd district of Vienna, Austria.
- TEL
- +43 (0)1 470 12 12
- URL
- http://www.hundertwasser-haus.info/en/(英語)
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ウィーン観光のおすすめ!フンデルトヴァッサーめぐり
ここからはおまけの周辺情報。フンデルトヴァッサーハウスの周辺ではとても便利に複数のフンデルトヴァッサー作品を楽しむことができます。
フンデルトヴァッサーがデザインしたお土産屋さん集合施設『フンデルトヴァッサーヴィレッジ』 はフンデルトヴァッサーハウスの向かいに、これまたフンデルトヴァッサーデザインの素敵なカフェが併設されているフンデルトヴァッサー美術館『クンストハウスウィーン』もフンデルトヴァッサーハウスから歩ける距離にあります。どこもフンデルトヴァッサー色全開で、それぞれの楽しみ方があり、ぜんぶ訪れて損はないです。
というわけで
ウィーン行ったらフンデルトヴァッサーめぐり、大変におすすめでございます。
少しでもアートや建築に興味のある方はぜひご検討を。
フンデルトヴァッサーハウスの次は、向かいにあるお土産屋さん集合施設 『フンデルトヴァッサーヴィレッジ』にいってみました。こちらもフンデルトヴァッサーデザインの建物で、こぢんまりながらフンデルトヴァッサーらしい有機的な雰囲気の楽しい建物です。
参考サイト
最後に。フンデルトヴァッサーとフンデルトヴァッサーハウスについての説明は以下のページを参考にしました。この記事では省略している部分が多いので、興味のある方はぜひぜひこちらのURLもご参照くださいませ。
- フンデルトヴァッサー・ハウス – Wikipedia
- フンデルトヴァッサーの世界
- フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー – Wikipedia
- 「直線は胸に抱くな」 孤高の芸術家・フンデルトヴァッサーは言葉も建築も素敵 | How to read maps
- 建築マップ オーストリア[クンストハウス ウィーン]1/2
それではまたねー。
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