刈田岳山頂から見た御釜

青森への旅も共にしたM氏からいきなり「オカマを見に行きたい!」と言われたのが旅の発端。一瞬新宿某所の濃厚なようすが脳裏をよぎりましたが、彼女の言ったのは蔵王にある湖「五色沼」、通称「御釜(おかま)」のことでした。
御釜は噴火後の火口に水がたまってできた火口湖。聞けば、その水はとても美しいエメラルド色なんだとか。エメラルドの水が輝く巨大なお釜…それはちょっと見てみたい!というわけで、蔵王の宮城県側にある刈田岳まで御釜を見にいってきました。蟹と鰻のデスマッチをはじめ、噴火を鎮めた伊達政宗の七男坊やら、冬になると神さまが山のふもとに引っ越すという山頂の刈田嶺神社やらも登場し、カオスなかんじでもりだくさんな夏の思い出です。

はじめに:「五色沼」違いに注意

「五色沼」と呼ばれる湖沼は、宮城県仙台市、福島県福島市、福島県裏磐梯にもそれぞれありますが、今回の五色沼はそのいずれとも違う、蔵王連峰にある五色沼(御釜)です。ご注意あれ。同名の五色沼リストはこちらから!

爆裂火口に煌めくエメラルド!蔵王の火口湖「御釜」こと五色沼にいってきた 目次とアクセス

  1. カニとウナギが死闘を繰り広げた不動滝に寄り道するの巻
  2. 蔵王連峰刈田岳で御釜こと五色沼を鑑賞するの巻
  3. 刈田岳山頂で見た伊達政宗七男坊の伝説と刈田嶺神社奥宮の巻

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今回は福島市から車で蔵王へ。これまた青森にも一緒にいったK氏に引き続き運転してもらって感謝!ありがたやー。所要時間はだいたい2時間くらいです。

1. カニとウナギが死闘を繰り広げた不動滝に寄り道するの巻

福島からの道中、遭遇した不動滝。
蔵王の不動滝遠景

看板によると、カニとウナギが壮絶な争いを繰り広げたそうです。
蔵王不動滝の説明看板
とんでくる粘液を左に右によけながら両の鋭い鋏を振りかざす紅のシザーハンズファイター!たとえカニが至近距離に来ようともその艶かしい動きでカニの裏を取らんとするヌルヌルの貴公子!その壮絶なる死闘の結末やいかに!!次週『蒲焼のタレは復讐の味!鋏に刻まれた不動滝の怨念』、乞うご期待!!

はい妄想妄想。ほんとはこういうお話だそうです。

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2. 蔵王連峰刈田岳で御釜を鑑賞するの巻

御釜は五色岳にありますが、その全貌を把握するため、基本的にはおとなりの刈田岳から見下ろします。

山道を走り続け、やっと刈田岳にたどり着くとそこは乳白色な濃霧ワールド。
蔵王刈田岳の濃霧
目の前まっしろ。果たしてこれで御釜は見えるのか…!山登るまではよく晴れて暑いくらいの天気だったのに!

でもとりあえずレストハウス前で記念撮影。
県営蔵王レストハウス前で濃霧と強風のなか記念撮影
霧で太陽見えないわ風は強いわで寒い!K氏が半袖なのはほかに服持ってきてないからです。

レストハウスを通り抜けて、御釜の方へ出てみたものの…
蔵王御釜(濃霧で何も見えない)
なにも!
蔵王お釜(濃霧で何も見えない)
見えない!

しかもすごい強風。
蔵王御釜にて濃霧に加え強風で髪がフレームインした写真
髪の毛ボッサ!!こりゃー貞子も顔面丸出しですね。

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蔵王の強風と霧と寒さの中でチラリズム御釜!

しばらく待ってみても、うっすら見えたり、見えなかったりの状態…。
なかなか見えない霧の中の蔵王御釜(五色沼)
15分くらい眺めてみたけどやはり霧は晴れず。と、ここで以前にも御釜に来たことのある半袖K氏が寒さを理由にレストハウスに引っ込みました。

するとどうでしょう。なにやら急に霧が晴れてきましたよ!K氏やっぱり雨男!雨男っていうか霧男?なんでもいいけど引っ込んでくれてありがとう!(ひどい)
霧の中うっすら見えた蔵王御釜(五色沼)
うっすらだけど全体が見えた!わー!と沸き上がる歓声!

K氏につられてレストハウスに戻りかけてた我々も大急ぎで柵まで戻ります。みるみるうちに晴れていく霧!
霧が晴れて見えた蔵王の御釜(五色沼)
綺麗なエメラルド色が見えてきましたよ!あれが御釜かー!たしかにきれいに水が溜まっていて、お釜のようにも見えます。

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なぜあの形であの色?御釜について調べてみた

ところでこの御釜、なんでこんな山の中にエメラルドの水たまりができたのでしょうか。例によって帰宅してから調べてみたよ!

しかしこの火山の分野ってすごく奥が深いのですね。調べていくうちに理系でもない素人が深追いするもんじゃないわーという気分になってきたので、なんとなく理解できた部分3つだけ簡単にまとめてみました。「らしい」とか「っぽい」とか曖昧な表現ばっかりなのは自信のなさの現れです。間違ってたら優しく教えてー!(うんちく飛ばしたい方はコチラ

(1) 御釜は鎌倉時代ちょい前の噴火でお釜の形になった!

御釜は火山の噴火の爆発で山が削れてあのような形になりました。簡単に歴史を追ってみます。
蔵王御釜の歴史簡単図解

文字にすると、
1182年、噴火。ドカーン

噴火の爆発で凹地ができてお釜状になる

1820年くらいから水が溜まり始める

水の底から火山ガスを噴出し続け今に至る

というかんじ。お釜の形になったのは800年以上前だけど、水をたたえて「沼」になったのは200年くらい前の話でわりと最近みたいですね。

(2) 御釜はカルデラ湖じゃなくて火口湖!

こういう形状の湖を見るとなんとなくつい「カルデラ湖」と呼びたくなるところですが、この御釜こと五色沼は厳密にはカルデラ湖ではなく、「火口湖」というものに分類されるらしいです。
蔵王御釜は直径330メートルなのでカルデラ湖ではなく火口湖
日本では2km以下の凹地を「火口」、2kmより大きいものを「カルデラ」と呼ぶらしいので、この分類は直径の大きさとかが主な基準っぽいです(自信なし)。ちなみにアメリカでは1マイル(約1.6km)が分かれ目。

(3) 温泉成分とかが含まれてるから水に色がついてる!

御釜のように噴火の爆発でできた火口湖は、温泉成分などが含まれているために強酸性だったり色がつくことが多いんだそうな。
蔵王御釜の水の色は温泉成分のせい

逆にカルデラ湖と呼ばれるものは、噴火以外の要因でできた凹地に雨水がたまって湖となるものが主なので、透明な湖が多いみたい。このブログで書いた十和田湖もカルデラ湖です。

噴火以外の要因ってなんだよ?とおもって更に調べてみたところ、たとえば、

山の脇からマグマが噴出するとマグマが溜まっていた部分が空洞になる

その空洞が山の重みによってへこんで凹地ができる

雨水がたまる

というのが噴火以外で凹地ができてカルデラ湖になる流れのひとつなんだそうです。ほほぉ。

下記、参考ページ。

とにかく御釜はカルデラ湖よりも小さい「火口湖」で、噴火の爆発でできた凹地に水が溜まってできていて、その水に火山由来の温泉成分が含まれてるからあんな色っていうことがわかりました。ほかのカルデラ湖や火口湖のことは深追いすると大変なのでとりあえずおいておきます。

ちなみに「湖」と「沼」の違いは法的にははっきりと定義されてないみたいですが、基本的には大きさとか深さを基準にしていることが多い印象。

いじょう、うんちくおしまい!

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もうちょっと近くから御釜と五色岳を観察する

それにしてもあんなに濃い霧だったのに、山の天気は本当に変わりやすいですね。
宮城蔵王にて。御釜に近づく道
もっとお釜に近づこう!ということで、この柵に沿って歩きます。
宮城蔵王にて、御釜に近づくホソミ
足元は石がごろごろしてて非常に歩きにくいよ。スニーカー必須です。

死んでる水と生きてる山

強風のおかげで逆に完全に晴れた濃霧。山の上だけあって日射しが強烈。絶対焼けるこれ!日焼け止めも必須ですね。

宮城蔵王・御釜近景
さっきよりちょっと近づいて、再びどーん!

静かなエメラルドの水面。この水はpH3.5ほどの酸性で、生き物はいないらしいです。エメラルドの都発見!と浮かれたのもつかの間、そこは死の世界でした…。

そんなわけで水の中ではなにも生きていませんが、湖底から火山ガスが出たりして、火山活動はひそやかに継続中。山は未だ生きているらしいです。
宮城蔵王五色岳(御釜)のひだひだ山肌
ヒダヒダが生き物っぽい。

こういう、噴火の水蒸気爆発で山が削れてできた火口は爆裂火口と呼びます。ばくれつ!!
宮城蔵王御釜の爆裂火口跡、外輪山
あの削れてるところもカッコよい!爆裂のようすを妄想してしまいます。

宮城蔵王御釜の外輪山
山肌ワイルド!フゥー!

宮城蔵王御釜にて。青空と風
強風は相変わらずでボッサになるM氏。空が青い。

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3. 刈田岳山頂で見た伊達政宗七男坊の伝説と刈田嶺神社奥宮の巻

そんな御釜を臨む刈田岳の山頂には、刈田嶺(かったみね)神社という小さな神社があります。写真の上のほうに見えてるやつね。
宮城蔵王刈田岳・刈田嶺神社への登り坂
この坂を登ってゆきます。整備されてる道だけど、なかなか急なので疲れます。がんばります。

宮城蔵王刈田岳山頂
木が全然なくて背の低い植物と石ころばっかり。
宮城蔵王刈田岳山頂にある蔵王国定公園の碑
蔵王国定公園の碑。基本的には晴れたけど、ときどき霧がかったり、雲に飲み込まれたり。
宮城蔵王刈田岳山頂にあった謎の建物
少し恐山を想起させる宮城蔵王刈田岳山頂の様子
ちょっと恐山をおもいだす雰囲気。

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噴火した刈田岳に登って「噴火ヤメテー」とお願いした伊達政宗七男・伊達宗高さんの碑

こちらは伊達政宗の七男坊、伊達宗高の碑。
宮城蔵王刈田岳山頂にある伊達政宗七男・伊達宗高の碑
宗高は刈田岳が噴火したときにそれを鎮めるために自ら易者とともに刈田岳に登って祈祷を行い、人々を救った名君として伝えられています。御釜を臨む刈田岳山頂にある伊達政宗七男・伊達宗高の碑
祈祷の効果はよくわかんないけど治める土地やその民衆のために噴火した山に登るってほんとだったらかっこいいですなあ。

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神さまが半年ごとに山を登り降りする刈田嶺神社

そうこうするうちにやっと刈田嶺神社の境内?に到着。
宮城蔵王刈田岳山頂にある刈田嶺神社奥宮の境内

この刈田嶺神社、じつはこの刈田岳の山頂とは別に、ふもとの遠刈田温泉にもうひとつの刈田嶺神社があって対になってるんだって。
刈田岳山頂にある刈田嶺神社奥宮の境内
遠刈田温泉にあるほうが「里宮(さとのみや)」、この刈田岳山頂のほうが「奥宮(おくのみや)」と呼ばれています。
宮城蔵王刈田岳山頂にある刈田嶺神社奥宮の本殿
なんで同じ神社が2つあるのかというと、冬は雪深い厳しい環境となるこの奥宮にお参りするのがたいへん!ということで、冬は山のふもとの里宮へ、夏は山の上の奥宮へ、と季節ごとにご神体を引っ越しさせる「季節遷座」を行っているんだそうな。

とは言え、引っ越すのは神様だけで、狛犬たちや本殿の建物はずーっとこのてっぺんにいるというわけで。
宮城蔵王刈田岳山頂にある刈田嶺神社奥宮本殿の看板
傷みが激しくなるのも仕方のないことですね。

狛犬も強風に揉まれていたよ。
宮城蔵王刈田岳の山頂にある刈田嶺神社奥宮で風に吹かれる狛犬
宮城蔵王刈田岳の山頂にある刈田嶺神社奥宮で風に揉まれる狛犬
宮城蔵王刈田岳の山頂にある刈田嶺神社奥宮で強風に揉まれる狛犬
「ボファアッ!!」

アンタずっとこんなとこにいるなんて忍耐力凄まじいね…。がんばれ!刈田嶺神社おくのみやチーム!

宮城蔵王刈田岳山頂から見た御釜(五色沼)
刈田岳山頂から御釜を見下ろす。

お釜みたいな湖があるだけかとおもっていたら、水の色は神秘的だし爆裂火口はワイルドだし、伊達の言い伝えや小さな神社まであってなかなかおもしろいところでした。自然環境に大きな影響を受けてきた人々の歴史を感じられて興味深かった。夏の蔵王へいかれる際はぜひ!

御釜(蔵王町観光協会サイト)

住所
宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉倉石岳国有地内
電話
0224-33-2215 または 0224-34-2725
URL
http://www.zao-machi.com/31

詳しいアクセス方法や冬季閉鎖の案内などが載ってるので実際におでかけされる方は要チェック!

最後に。
蔵王御釜で快晴を呼んでくれたてるてる坊主のテル美
車で待機して晴れを呼んでくれたテル美にスペシャルサンクス!

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